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税制改正で電子帳簿保存にメリットが生まれても、まだ様子見すべき理由

2018年度の税制改正大綱が決定されました。
今回は所得税改革第2弾として、各種控除の見直しが盛り込まれています。

個人事業主や不動産オーナーさんに目を向けると、
2020年分の申告から、
基礎控除が原則として10万円引き上げ(減税)となります。

一方で、青色申告特別控除は、10万円引き下げ(増税)です。
ただし、「一定の要件」を満たせば、青色申告特別控除の引き下げは無くなります。

引き上げたり引き下げたりややこしいですが、
要は「一定の要件」を満たすことに、所得ベースで10万円分のメリットが生まれるのです。

では「一定の要件」とは何か?

①確定申告を電子申告にて行うこと
②仕訳帳・元帳を電子帳簿にて保存すること

このどっちか1つです(※どちらも、ではありません)。

現状、①については、税理士に頼むか、
マイナンバーカード&ICカードリーダーを取得して、
自分で実施する必要があります。
ただ、
・税理士に頼むと高そう
・マイナンバーカードは怖いから発行したくない
・年1回のためにわざわざICカードリーダー買う気がしない
なんて方も多いのでは。

一方の②については、
・会計ソフトがやってくれるんでしょ
・PDFで保存しとけばいいんでしょ
などと簡単に思われがちかもしれません。

しかしながら、電子帳簿保存は、
特に個人事業主にとってはハードルが高く、現状ではオススメできません。

電子帳簿保存のメリット・デメリットは?

個人事業主や零細企業にとって、
電子帳簿保存を導入するメリット・デメリットは何でしょうか。

メリットは当然、書類の保管コストが削減されることでしょう。
2020年分の申告からは、控除額が10万円増える、というのもメリットです。

問題はデメリットです。

・コストが見合わない
→実は対応する会計ソフトは多くはありません。
電子帳簿保存にしっかり対応しているものを選ぶと、
ソフトや利用プランのランクが上がってしまい、コストが見合わないのではないかと思います。

例えば、先ほど説明した控除額10万円引き上げ要件②の
「仕訳帳・元帳を電子帳簿にて保存すること」ですが、
・やよいの青色申告
・会計freee
・MFクラウド会計
いずれも対応しておりません。
会社向けの「弥生会計スタンダード」であれば対応していますが、
定価は3倍以上高いです。
これなら要件①の電子申告の方がマシです。

同じ電子帳簿保存でも、レシートや請求書等をスキャンしてデータ化し、
紙は破棄できるという方の電子帳簿保存(いわゆるスキャナ保存制度)
もありますが、こちらも高いです。
例えば会計freeeでは、対応しているのは年額39,800円(税抜)のプランのみです。
基本のプランが年額9,800円(税抜)ですので、4倍近くの差があります。

・要件が厳しく、経理体制が煩雑になってしまう

国税側の理屈として、
書類の電子化によって「改ざん」「ねつ造」といったリスクを恐れており、
電子帳簿保存を認めるためのハードルが高いです。

例えば、レシート等のスキャナ保存制度では、
支払いを行った本人が土日を含め3日以内に電子化処理を行い、
上司や経理担当者等による承認が必要で、
加えて、承認を行っていない経理担当者等が定期的にチェックを行う必要があります。

さらに、これらの管理体制をルール化して文書にまとめ、
事前に税務署の承認を得なければなりません。

一般に電子帳簿保存に対応すると、
「経理処理に関する管理体制が強化される」とのメリットが語られますが、
一定程度以上の規模の会社でなければ、
これはデメリットになるのではないか?とも思ってしまいます。

まずは目の前の書類のペーパーレス化を

いわゆる「ペーパーレス化」、
特に年齢若めの方が興味を持っていらっしゃる傾向が高いようですが、
税務関係書類は時期尚早です。

その前に、まずは自分のデスクをきれいサッパリしましょう!!
ということですね。

 

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