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節税ノウハウ

倒産防止共済に”節税”効果を期待してはいけない

倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)は節税の鉄板ネタですが、
「税負担を減少させる」という意味の節税効果は基本的にありません。
これは、退職金を組み合わせようと、
解約返戻金を赤字と相殺させようと、同じことです。

倒産防止共済制度に加入してますか?
どんな目的で加入していらっしゃいますか? 
その効果について正しく理解していますか?

今回は、倒産防止共済の節税効果について検討します。

倒産防止共済=節税効果が高い、という呪縛から解き放たれましょう。

実際には、ほとんどの場合、
税金の納付タイミングが先送りになるだけで、
税負担自体は変わりません。
それどころか、資金融通が効かなくなるため、
かえって別のところで損するかもしれないのです。

税負担を回避しつつ、資金をプールできる?

倒産防止共済制度とは、取引先の事業者が倒産した際に、
連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
毎月一定額ずつ掛金を支払うことにより、
緊急時には無担保・無保証人で
掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れできるものです。

…というのが本来の制度趣旨ですが、
掛金を全額経費にできる、という節税効果
の方が脚光を浴びていたりします。

つまり、年間最大240万円について経費にすることができるのです。
40ヶ月以上加入していれば、掛金額全額が返ってきます(返戻率100%)。

したがって、合法的に税負担を回避しつつ、資金をプールしておけるのです。

しかし、これは本当でしょうか??

トータルの税負担は変わらない

数値例でみていきましょう。

年間で事業利益が400万円ずつ出る会社にて、
倒産防止共済に加入していない場合としている場合とで、
6年間トータルの損益を比べてみました。

※説明の便宜上、税率は以下の通りとします。(以下同)
・税前純利益800万円まで 25%/800万円超 30%

一番右の合計の列を見ていただくと、
法人税等の負担額はほとんど変わりません。
(むしろちょっと悪化)

これは、倒産防止共済に加入している場合、
5年目に解約していますが、
この際の解約返戻金800万円について税金がかかっているためで、
結局、税金を負担するタイミングを遅らせることしかできていません。

しかも、中小企業の場合、年間所得が800万円を超えてくると
適用税率が大きく上がるため、
加入パターンの方が税負担は大きくなってしまっています。

返戻金と退職金を相殺できれば…??

ただ、「解約返戻金には課税される」ことについては、
デメリットとしてよく知られているでしょう。
「出口戦略が重要!」なんて言われ方がしますが、
解約時に、解約返戻金と対応する費用をぶつけて
税負担を回避しましょう、というのが常套手段。

その際によく言われるのが、役員退職金と組み合わせる、というアイデア。

5年目に退職金800万円を支払う、という場合で
シミュレーションしたのがこちらです。

やはり、トータルでの税負担は400万円で変わりません。
加入していなくても、退職金分の経費は将来の利益とぶつけられるので、
結局全体としてみれば、税負担は同じになるのです。

一方で、加入することで、
損益や税負担をできるだけ均等にならす、という効果は出ています。
これが本来の節税効果。
「課税の繰り延べ」というやつです。
純利益の推移を見ていただくと、
加入していない場合には、損益が乱高下しているのに対し、
加入する場合には、純利益は比較的なだらかに推移しています。

また、退職金原資の確保、という観点でいうと、
加入していないパターンでは、
別のところで計画的に資金を積み立てておかないと、
原資を確保されないリスクがあるかもしれません。

ただ、この点で誤解してはいけないのは、
倒産防止共済では税負担無しに資金をプールできるわけではない、ということ。
結局、税金はかかるのです。
ただそのタイミングが遅れる、というだけです。

返戻金と将来の赤字をぶつければ…??

また、「将来赤字になった場合にぶつければよい」
というアイデアもありえます。
実際、事業利益は予測が難しく、かつ変動するものです。

結果は、退職金のシミュレーションと同じ。
税負担は、やはり変わりません。

一方、損益や税負担の変動を緩和する、という効果もやはり出ています。
この事例では、4年目にはじめて赤字となり、
5年目で大きく赤字幅が拡大しております。
しかし、4年目に掛金を減額し、5年目に解約、
という調整を行っているために、
純利益は比較的なだらかに推移しています。

現実には、6年目にこのようなV字回復する例は
あまり無いかもしれませんが、
もっと長いスパンで見て業績が戻ってくれば、
金額影響としては同じようなことになります。

設備投資目的はアウト

つづいて、「大規模修繕と返戻金をぶつけたらどうか?」というアイデアも
耳にしたことがありますが、これは危険です。

修繕費として、全額一時の経費となれば良いのですが、
・耐久性を増大させる
・価値を向上させる
と税務上判断されると、固定資産として計上することになります。
そうすると、一時の経費にはできないのです。

このケースでは、建物と判断され、
耐用年数22年に渡って、年36万円ずつしか経費にならなかったケースです。

税負担は、582万円→640万円と増えてしまっています。
これは、加入しているパターンでは、
5年目に税前利益が800万円を超えてしまい、
適用税率が上がってしまったことによるものです。

このように、設備投資を行うと、一時の経費にできず、
解約返戻金と相殺できない可能性が出てきます。
これだったら、定期積金にでも入れといた方がまだマシです。

また、加入している間の資金繰りを圧迫するという事実も見逃せません。
最低でも3年半ほどは掛金を支払い続けないといけません。
たとえば、2年目あたりで緊急修繕が必要になってしまって、
自己資金が足りないからといって、
新規に借入れを起こして設備投資を行うとしたら、
金利負担分だけ損をすることになります。

それだったら、倒産防止共済には加入せずに、
税金払ってでも手元資金を増やしておいて、
自己資金で設備投資した方がマシです。

しかも、解約する際に返戻金に対して課税されてしまう、と思うと、
なかなか解約するタイミングが見つからなかったりします。
そうすると、その期間中、掛金は宙に浮いたままになってしまうので、
やはり自己資金が足りないときに、
新規に借入れをしてしまえば…金利負担分だけ損をすることになります。

それだったら、税金払ってでも解約して資金調達する、というのも手です。
どうせ税金は払うのですから。

というわけで、倒産防止共済と設備投資は親和性がよろしくありません。
設備投資用資金をプールする目的なら加入してはいけませんし、
直近で設備投資が想定されるのであれば、
無理して加入しなくてもいいでしょう。

まとめ

 

以上をまとめると

  • 「税負担の減少」という意味の節税には期待しない
  • 損益の安定化=税負担の安定化には有用になりうる(ただし損益見込によって調節する)
  • 設備投資の見込があるなら無理して加入しなくていい

 

本稿によって、倒産防止共済=節税効果が高い、
という呪縛から解き放たれ、
税負担を適切にコントロールできるようになっていただければ幸いです。

というわけで、倒産防止共済制度に現在加入している方も、
これから加入を検討している方も、
今一度御社の業績をご確認いただき、
・加入は適切か?
・掛金額は適切か?
・解約タイミングの是非は?
改めてご再考ください。

ABOUT ME
飯塚 千隼
仙台の公認会計士・税理士。 スモールビジネスの社長やフリーランスの不安や悩みを解消する近道として、事業の数字を「見える化」する仕組みづくりをサポートしています。 顧問税理士のいない個人事業主の方向けにスポット相談もお受けしています。 詳細なプロフィールはこちら