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税法上の耐用年数まとめ

分かりやすいようで分かりにくい税法上の耐用年数。
実務的にも、個別に判定してはいるものの、なかなか全体像は整理しにくかったりします。
というわけで、ここらでいっちょ、整理してみました!

原則は、法定耐用年数。
課税の公平性などの観点から、実態は無視して、画一的に設定されています。

ただ、あまりに実態からかけ離れているよね…という状況にある場合、
各種の特例的な取り扱いが認められます。
以下、①〜③に分けて説明します。
※正確性より分かりやすさ重視で説明しています。
実際の適用に当たっては、該当の法令を確認してください。

↑仙台市内の中古の某観覧車。耐用年数は何年で設定しているのでしょうか…

①中古資産の見積法・簡便法


※計算は年未満切捨てで、最低2年
※無形固定資産(ソフトウェアなど)は、見積法のみ適用可

中古資産にまで、新品と同様に法定耐用年数を適用されるのは、さすがに厳しい、
ということでこちらの容認規定。

見積法→(見積り困難なら)簡便法、という関係にありますが、
実務上、合理的な見積もりができることは稀なので、簡便法が実質メインです。

ただし、中古資産に行った資本的支出の金額が大きすぎる場合は、
その分耐用年数も長くなるよね、となりますので、
その金額に応じて制限がかかってきます。

なお、制限ⅱにおける「中古資産の再取得価額」とは、
中古資産を買った時、もし新品を買ったとしたらかかるであろう金額
(再調達価額あるいは新品調達価額)を指します。

②資本的支出の各種特例

資本的支出とは、既存の資産に対する修繕や改良を行った金額のうち、
使用可能期間を延長させる又は価値を増加させる部分のことです。

この資本的支出は原則として、
その資本的支出の対象となった資産と「同じ耐用年数」の資産を
「新たに取得」したものとして処理する、
とされております。
・「同じ耐用年数」=既存資産の耐用年数を受け継ぐ
・「新たに取得」=既存資産の残存年数ではなく、0年から数え直し
がポイントです。

既存資産の耐用年数を受け継ぎますので、
既存の資産が中古資産で、前述の見積法などで耐用年数を設定していた場合には、
資本的支出についても、その耐用年数を受け継ぎます。
ただ、そういった事例はほとんどありませんので、
原則的には法定耐用年数です。

また、0年から数え直し、というのは、
モノは古くても、工事自体は新しいでしょ、という考え方です。
ザックリした例えをすると、
法定耐用年数50年の建物が、40年経ったので改修工事をしました、
といっても、改修工事はやったばかりなのだから、
その耐用年数は(10年ではなく)50年ですよ、というような話です。

その他、各種特例的な取扱いがあるのですが、
耐用年数を大幅に短縮するようなものはありません。

ただ、一点、毛色の異なる例外規定があるので、紹介しておきます。

■他人の建物に対する内部造作
法人が建物を貸借し自己の用に供するため造作した場合、
それが建物についてされたときは、
(法定耐用年数ではなく)合理的に見積った耐用年数によります。
ただし、
・賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)
・かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないもの
については、賃借期間を耐用年数として償却することができます。

③耐用年数の短縮制度

最後に、全般的な特例規定として、耐用年数の短縮制度があります。

・法令で定められた「短縮事由」に該当する
・使用可能期間が法定耐用年数より概ね10%以上短縮する
・国税庁に所定の書類を提出し、承認を受けている

といった要件に該当する場合に認められます。

なお、「短縮事由」とは、以下のいずれかを指します。
①種類等を同じくする他の減価償却資産の通常の材質等と著しく異なること。
②その資産の存する地盤が隆起又は沈下したこと。
③その資産が陳腐化したこと。
④その資産がその使用される場所の状況に基因して著しく腐食したこと。
⑤その資産が通常の修理又は手入れをしなかったことに基因して著しく損耗したこと。
⑥同一種類の他の減価償却資産の通常の構成と著しく異なること。
⑦その資産が機械及び装置で、
 耐用年数省令別表第2に特掲された設備以外のものであること。
⑧ その他上記①~⑦に準ずる事由

詳細はこちらの国税庁HPをご覧いただければと思いますが、
適用イメージとして、一例をあげますと、以下のようになります。

法定耐用年数10年の資産について、3年目に陳腐化により短縮事由に該当し、
使用可能期間が8年と見積もられたため、耐用年数の短縮を申請。
承認後の4年目より、残存使用可能期間の5年間で償却。

 

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